大人の矯正
大人の矯正について
大人になっても気になる歯並びは治せる
大人になってからでも歯並びを治すことはできます。歯根膜(歯と骨をつなぐ組織)があれば歯を移動させることが可能です。しかし、骨と歯が癒着していたりすると歯が動きづらいことがあります。年齢制限はありませんが、なるべく若いうちの方が歯が動きやすいかと思われます。今まで最高齢で70代で矯正治療を行った方もいらっしゃいます。
年齢よりも、歯根膜の状態と、大人になるとどうしても増えてくる歯周病、虫歯の状態の方が矯正を行えるかどうかの重要な要素です。
子供の矯正治療との違い
子供の矯正治療では、成長のピークに合わせて骨の成長を促進したりして、顎の幅を広げて歯が並ぶようにスペースを作っていきます。大人の矯正ではほぼ骨格が完成されているため、顎のスペースが少なく歯並びが悪い場合は便宜抜歯を行い、スペースを作ることがあります。
※すべてのケースで抜歯ではありません。顎の過成長、もしくは劣成長で、明らかに骨格的に問題がある場合は、大学病院などで手術を伴う外科矯正となります。
大人の矯正で利用する矯正装置
マルチブラケット装置
加強固定装置
歯科矯正用アンカースクリュー(矯正用インプラント)
マウスピース矯正
●抜歯になるケース |
---|
歯の大きさ、顎の大きさ、唇や前歯の突出度、歯の重なり方、奥歯の位置のずれ、など様々な要因で決まります。検査後の分析の結果、これらが平均値から離れたところにある場合、抜歯の可能性が高くなります。 歯を抜くか、抜かないか微妙なケースの場合は、診断時に2通りの治療法、仕上がりの予測をお話ししますので、よく相談の上決めていければと思っております。 |
歯並びの乱れによる身体のトラブル
虫歯・歯周病
歯並びが悪いと、普通に歯ブラシを当てた時にちゃんと当たらず浮いてしまい、磨き残しができやすくなります。磨き残しがあると、歯肉の腫れ、虫歯になるリスクが上がります。また、定期健診などの時にレントゲンを撮る場合も、歯が重なってしまうので虫歯の発見もしづらくなります。
虫歯になって治療をする場合でも、歯並びが悪いと、詰め物、被せものを適合させるのが難しくなり、その隙間から虫歯になるリスクが高くなり、また虫歯...と悪循環に陥ることが考えられます。
耳鳴り
歯並びが悪いと、顎の関節に負担がかかり、顎関節症などの症状が出てくることがあります。
耳のすぐ近くに顎関節がありますので、そこで炎症などがあると耳鳴りなどの可能性があります。
頭痛・肩こり
頭痛、肩こり、どちらも歯並びが悪いと、不自然に口の周りの筋肉、そして、首周辺の筋肉が緊張します。
これにより、頭痛、肩こりなどを起こす可能性が考えられます。
矯正中に気を付けること
矯正中に虫歯にならないために重要なこと
矯正治療中は通常の状態よりも虫歯になりやすくなります。まずは矯正装置が入る前に、歯ブラシを見直しましょう。
矯正が始まると、症例、またそれに伴う矯正装置の種類により、汚れの付きやすい場所が変わってきます。
複雑な矯正器具が入った状態では、ご自身で磨けてるつもりでも磨けていないことが多々あります。調整の際に器具を外した時は、クリーニングを行い、普段汚れが取りづらいところまでしっかりケアしていきましょう。
基本的には衛生士を担当制としておりますので、歯ブラシ、歯間ブラシなどの練習をして一緒になってお口の中を良い状態にしていきましょう。
矯正中になるべく食べてほしくないもの
粘着性の高いガム、キャラメル、お餅などは食べることは可能ですが、装置に絡まりやすく清掃が大変になりますのでなるべく控えた方が良いかと思われます。また、固い食品、おせんべい、固いお肉、フランスパンなどは矯正装置に当たらないように、なるべく小さくして奥歯で食べるようにしてください。大きく比較的固いリンゴなどの丸かじりはしないようにしてください。
繊維状の食品(ほうれん草、鳥のささ身など)は矯正器具に引っ掛かりやすくなりますので、食べるごとに歯を磨く習慣をつけましょう。
マウスピース矯正の場合は食べ物に関しては自由度は高いですが、マウスピースを付けたときに中にジュースなどの成分が残っていると唾液で洗い流されることなく、糖分がマウスピース内に停滞し虫歯の進行が考えられますので、矯正器具に引っ掛かることはありませんが、食後のケアは重要です。
大人の矯正の流れ
1. カウンセリング
まずは無料でカウンセリングを行います。既に当院で定期健診などを受けていただいている方は、レントゲンや口の中を見ながら、患者様の歯並びで気になっている部位を伺えればと思います。大体の治療方法、治療期間、予後、金額などをお話しできればと思います。
詳しい治療方法などの決定は、矯正用の検査、分析を行った上で決定させていただきます。相談自体は無料ですが、虫歯、歯周病があると矯正ができない、もしくは虫歯により抜歯する部位などがあると矯正の計画も変わってきますので、できればこの時点で虫歯、歯周病のチェックを定期健診でしていただけると効率が良いかと思われます。
2. 検査
矯正の検査では、
・診断用模型作成の型取り
・矯正用レントゲン(セファログラム)
・口腔内写真
の検査をさせていただきます。
場合によってはCTなどの検査、予測模型の作製を追加で行っていきます。
3. 診断
矯正の検査をもとに分析を行い、一般診療とも連携し、虫歯、歯周病の程度、今後状態が悪化しそうな歯などを踏まえ治療計画を立てていきます。矯正の分析結果はわかりやすくまとめてお渡ししております。
最近マウスピース矯正を希望される方が多くいらっしゃいますが、分析の結果によっては適応とならないケースもございます。矯正認定医により、患者様のご希望に沿いつつ、無理のない治療計画をたてていきますのでご安心ください。
4. 治療開始
まずは虫歯、歯周病の治療が終わっているのを確認します。
すべてのケースではありませんが、場合によりスペース確保のための抜歯、矯正用のインプラントなどを行い、矯正をするための下準備を行っていきます。その後、矯正用の型取り、矯正器具の取り付けなどを行い、治療開始となります。
5. 保定
矯正治療後は歯が後戻りしやすく、動きやすくなりますので、保定装置(リテーナー)をつけていただきます。
場合によっては歯の裏側からワイヤーで固定して、保定をする場合もございます。
6. メインテナンス
治療後は綺麗に並んだ歯が虫歯や、歯周病にならないようにメインテナンスをすることが大切です。
保定により歯の裏側からワイヤーで固定などをしている部分は歯石などもたまりやすく、ケアが必要です。
矯正を考えている皆さまへ
歯科医師からのメッセージ
矯正認定医 副院長 西田 麻美
テレビを見ていたり街中を歩いていると、ちょっと矯正して治せばすごい綺麗にみえるのに...と思うことがあります。
もちろん見た目がすべてではないですが、心理学上、第一印象はとても重要です。日本人の俳優さんは歯並びの悪い方はたまにみますが、海外ドラマなどではほぼ見かけません。子供向けのアニメですら、出てくる子供たちが矯正をしていたりします。
それくらい海外では矯正治療が身近なもので、歯並びが悪いと虫歯や歯周病などのリスクになることをよく知っているからだと思います。
単純に見た目も大事ですが、その先の虫歯、歯周病などのリスクも知っていただき、一生使う歯を少しでもいい状態で残すための予防(先行投資)と考えていただければいいなと思っております。
一般診療担当 院長 西田 敬太朗
保険などの一般診療をしている時によく遭遇する症例としては、前歯は綺麗に並んでいて、一見歯並びに問題なさそうな場合でも臼歯部がシザーズバイト(鋏状咬合、歯のかむ面ではなく、歯の横で上下でかみ合ってしまっている状態)になっている場合があります。
こうした場合、上顎はほっぺた側に傾いていることが多く、下顎はべろ側に傾いていることが多く、掃除がしづらい。また、それに伴い、虫歯、歯周病にしてしまう可能性があります。
虫歯になったので、被せものを作るにしても、本来掛からない真横から力が掛かるので、外れやすくなります。また、ブリッジなどのケースでは周りの歯と平行になるように形を整えるため、歯が傾いていると切削量が多くなり、神経の処置になる可能性が高くなります。神経の処置になり、変な方向からの力が掛かるとその後、歯が割れ、抜歯になる可能性も高くなります。
たとえ神経の処置にならなかったとしても、ブリッジ(橋)の橋脚が斜めになってる状態です。斜めに傾いた橋脚(歯)に橋(ブリッジ)をかけても必ずダメになります。
矯正を使わずに一般診療を行っていると、いつもそんな場面でどうしようか悩むことが多々あります。
奥歯も含めてのかみ合わせなので、見た目の前歯の歯並びも気になると思いますが、奥歯も含めて若いうちに良い歯並びにしておくことが、後々の治療でも無理なく、治すことができるのにな...と毎回思います。